レジ袋有料化の「抜け穴」
プラスチック問題担当 大舘 2019-11-29
レジ袋の有料化が2020年7月からスタートします。
国内ではとても大きなニュースになったこともあり、プラスチック問題解決のために大きな期待を寄せている方々もいらっしゃいますよね?
ただ、残念ながら内容を見てみると、そこには「まやかしの解決策」がチラホラと…
有料化といっても、とっても大事なところで有料義務化の除外がされてしまっています。
「厚みのあるプラスチック袋」は除外
0.05ミリ以上のものはリユースして何度も使えるので、使い捨てにはならないからという理由で、除外。0.05ミリというのはどのくらいかと言うと、服などを買った際に渡されるショッパー(買い物袋)ぐらいです。
みなさんは、そのぐらいの厚みであれば、何度もリユースして大事に使いますでしょうか?
ちなみにユニクロ・GUのファーストリテイリング社は、すでにプラスチック製ショッパーの廃止を決め、今後は紙バッグ(FSC森林認証を受けた紙など)も有料化する方針です。ファーストリテイリング社の担当者によると、「森林に配慮している紙素材を使っているからといって、たくさん使っていいわけではない。基本的にはマイバッグを持ち運ぶ文化を根付かせ、ショッピングバッグ自体の使用を減らしていくための試み」とのことです。
分厚ければリユース可能なので有料義務化から除外というのは、こういった企業の取り組みに比べてあまりにも甘く感じてしまいます。
「植物由来や海洋分解性プラスチック」も除外
植物など生物由来のバイオマスプラスチックは、配合率が25%以上であれば除外される
微生物によって海洋で分解される海洋分解性プラスチックも除外される
これは、バイオマスプラスチックが25%以上であれば、それ以外の原料が石油由来であっても除外されると読み取れます。
バイオマスプラスチックは、レジ袋だけでなく、あらゆるプラスチック容器包装などの代替として取り組みが進んでいます。
トウモロコシなどから作られるバイオマスプラスチックは、海に流れだせば石油由来のプラスチックと同じように動物を傷つけたり、農地開拓のために森林破壊に繋がったり、食用の穀物の生産と競合し食の安全が脅かされてしまうなど、問題を抱えています。
日本政府が2019年に策定した「プラスチック資源循環戦略」では、2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入することを目標として立てており、具体的な取り組みに向けた検討会も2020年6月からスタートしました。
バイオマスプラスチックはトウモロコシやサトウキビなど農作物から作るため、農地が必要になります。検討会資料にそって、仮に200万トン分のバイオマスプラスチック原料を作るためにどのくらいの農地が必要か計算すると、ざっと300万ヘクタールぐらいとなります。日本の耕作地面積は450万ヘクタールぐらいなので、これがどれだけ大きい数字かわかりますよね。これだけ見ても、ただ単に他の素材に変えようという議論が、本質的な問題解決にはならないと感じられるのではないでしょうか。
また、微生物によって海洋で分解される海洋分解性プラスチックも除外されていますが、これはまだ技術的に開発途上です。
詳しくは:プラスチック汚染 — 紙や生分解性プラにすればOK?
10年遅れで内容も薄い”有料化”
イオンでは2007年からすでに無料配布禁止の取り組みを始め、2011年からは有料のレジ袋に関してもバイオマス配合素材への切り替えも始めています。またイオン以外にも、バイオマスプラスチックが25%以上のレジ袋を使っている小売大手はすでにあります。
イオンの無料配布禁止の取り組みが13年前にスタートしたことから考えると、政府は10年以上遅れてようやくレジ袋を有料化し、バイオマスプラスチックに関しては有料化義務付けから除外するという先進性もない内容になっています。
何のための規制なのか
結局のところ、骨抜き状態になってしまっているのが、「レジ袋有料化議論」です。世界ではプラスチック製のレジ袋の有料化どころか、禁止に向かっている国や地域もあり、さらにはレジ袋を超えて、使い捨てプラスチック全般への規制も日に日に高まっています。そんな中日本は、レジ袋の有料化すら満足に規制を進めることができていません。
政府のプラ戦略の 「象徴」として扱われるレジ袋有料化トピックですが、有料化の議論ですでに骨抜き状態になっているのを見ると、まるで日本政府のプラスチック、あるいは環境問題に関してのゆるーい取り組みの「象徴」となってしまっている気さえしてきます
本質的なリデュース・リユース議論を一刻も早く
海洋プラスチック汚染だけでなく、環境問題解決をめざすならば、まず使い捨てプラスチックを大幅に減らす事が大前提です。そして、そもそも使い捨ての代替素材に頼らないリユース社会をつくっていくための本質的な取り組みが必要とされています。
リユース(再利用)・リフィル(詰め替え)が当たり前の社会を目指すために、グリーンピースはいま「リユース・レボリューション」キャンペーンを行っています。様々なアクションをご紹介しています。
私たちにできること
2019年には、立憲民主党が環境省副大臣と経産省副大臣に行なった申し入れに、「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」を代表して、グリーンピース・ジャパンとWWF JapanがNGOの見解をお伝えしてきました。
環境省石原副大臣への申し入れ後には、立憲民主党が記者会見を開き、その場でNGOネットワークとしての意見をメディアにも伝えました。
共通して伝えたのは、有料化義務付けに関して例外を設けないということ。そしてより循環型の社会を目指していくために、使い捨て包装の大量生産・大量消費に頼り切った社会システムを見直し、抜本的な取り組みが必要ということことです。
経産省牧原副大臣、立憲民主党議員、WWF Japanの三沢氏と経産省申し入れにて
ただ、残念ながら環境省も経産省からも現在の方針を見直そうという意思は感じることができませんでした。だからこそ、あなたの力が必要です。
2019年12月25日に開催されたレジ袋の有料化を議論する経産省と環境省の合同専門家会議。グリーンピースも傍聴に行ってきました。
今回のレジ袋有料化の決定は、使い捨てプラスチック対策の第一歩です。
しかし、厚みのあるプラスチック袋、植物由来や海洋分解性プラスチックの袋などが有料化の対象から例外となりました。レジ袋は、プラスチックごみ(廃プラ)全体の約2%でしかありません。国際的には、有料化どころか禁止の動きが加速し、プラごみ全体をどうするかという議論が進んでいるなか、日本の出遅れ感が目立ってしまう結果となりました。
プラスチックの使用量がわずかに減ったところで、海洋汚染などの地球環境問題は解決しません。有限な資源が使われる以上、素材が何かということは本質的な問題ではなく、根本原因は使い捨て包装に依存したビジネスモデルや暮らしのあり方です。
レジ袋有料化は、例外対象を設けたことにより「まやかしの解決策」の一つでもある「代替品への移行」への道を開き、使い捨て文化の脱却からさらに遠ざけてしまう可能性があります。
グリーンピース・ジャパンは、使い捨て包装に頼らない小売業者への革新を求めた報告書「スマート・スーパーマーケット」を発表しました。世界中にすでにあるリユース(再利用)・リフィル(詰め替え)のアイデアを組み合わせるだけでも、さまざまな解決策が生まれており、使い捨て包装に頼らない社会は実現可能であることを紹介しています。レジ袋有料化を機に、リユース・リフィルの解決策が真剣に議論されることを期待します。
https://www.greenpeace.org/japan/sustainable/story/2019/11/29/11643/